絵描き忠田愛の旅の記録。出会ったものたち。感じたこと。旅行記をゆっくり更新中。
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キムンカムイ

清里町を出て車で1時間すこし走り、いよいよ知床ウトロ市街に入った。

ウトロに入ったら急にいろんな動物が出てくるよ。
ロッジのオーナーの言葉を思い出し、アクセルをゆるめ、窓を全開にして神経を外に集中させる。
ウトロの町は知床の玄関口で、すぐそこまで迫る山と海の間に民宿やホテルなどが点在する つつましやかな温泉街だった。
ウトロ=ウトゥルチクシ (Uturu-ci-kus-i)  アイヌ語で「その間を-我々が-通る-所」という意味の場所。
ウトロの港に差しかかると三角岩、オロンコ岩、帽子岩、ローソク岩など大きな奇岩が不思議な存在感を持って迫ってくる。かつて陸路が無かった頃、人々はこの岩の間を通って海との間を行き来していたのだろう。潮の強い匂いが突きあげる。オホーツク海の波は荒い。冬の風はどんなに激しく冷たいことだろう。

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ウトロ市街を通り抜けてすぐの橋に差しかかった時、何人か川の方を見ている人がいることに気付いた。もしかしてカラフトマスの遡上だろうかと期待に胸を膨らませて、車を脇に寄せて降りてみると
なんということだろう。
3匹のヒグマが悠然と川を歩いていた。
突然のことで、目の前の状況がすぐに飲み込めない。
橋の上から川縁のヒグマまでは200mくらいだろうか。慌てて双眼鏡を取り出し、焦点をあてる。
目の前に大きくクローズアップされた熊の姿からは、体温や息づかいまでもが伝わってくる。
熊の毛は光をうけて金色にかがやいていた。

感動とともに不思議な気持ちが胸を衝く。
それはうまく説明のしようのない、熊の前に行ってひれ伏したいような思いだった。
畏れにも似たなにか。
それは自分の命が、生態系の頂点にいる熊を、本能的に感じた瞬間だったのかもしれない。

熊たちの背後にはおおきな森があり、海へ流れ込む透明な川があり、熊たちの住む山があった。
それは信じられないほどうつくしい風景だった。
熊のうつくしさは、熊の生きる森の深さであり、海の豊かさそのものだったからだ。
キムンカムイ、アイヌ語では熊を山の神という。
熊の生きる風景がここにある。
そのことに激しく、強く勇気づけられていた。

きっとこれから先、何度もこの風景を思い出すだろう。満天の夜空の下に佇む熊たちの姿、ふかい雪と大地の間で身体を丸めて眠る熊たちの姿が何故かありありと心に浮かぶ。

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しかし、ヒグマが山からウトロ市街にも時々出没するようになってきたことは、知床の問題のひとつでもある。知床を訪れる人が、熊やキツネにお菓子や餌をあげることがあり、その結果人間に慣れ、近づいた熊は殺さざるを得ないのだ。知床で人間とヒグマがこれまでそうしてきたように、距離を保ちながら共存していけることを心から願い、今知床の皆さんが懸命に呼びかけている文章を添付します。

人から与えられた食べ物をヒグマが食べる-
それがどんな結果を招くか、考えたことがありますか?
ヒグマは賢い動物です。
人から与えられた食物の味を知ってしまうと、
人間のところに行けばおいしいものが手に入ると考えるようになります。

このようなヒグマは、やがて人間を攻撃して食べ物を無理やり手に入れようとして
事故を引き起こすことが知られています。
観光客や地元の住民に危害を与えるヒグマは殺さなければならなくなります。
不幸な事故をなくすため、不幸なヒグマの死を防ぐため、ヒグマにえさを与えない。

知床を訪れる私たちの約束です。



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by ai-viaggio | 2015-09-07 23:15 | '15北海道
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